カルシウムがジャガイモの品質改善に貢献 ― ジワン・パルタ博士の講演(Potato News Japan 2011/7/29)

 米国ウィスコンシン大学マディソン校のジワン・パルタ教授は、ジャガイモにおけるカルシウム施肥について、その吸収経路を生理学的に解明するとともに、ジャガイモの品質改善に大きな役割を果たすことを明らかにして、世界のジャガイモ栽培に大きな影響を与えてきました。同教授が2011年の国際ジャガイモ加工・貯蔵会議(IPPSC 2011)で行った講演の内容をご紹介します。


 6月21日、国際ジャガイモ加工・貯蔵会議(IPPSC 2011)は米国コロラド州デンバーのダウンタウンに位置するクラウンプラザホテルで予定通り開幕した。会期は6月23日までの3日間である。本会議の目玉は、弊社Potato News Japanが会議への招聘を申し込んだウィスコンシン大学マディソン校の植物生理学者ジワン・パルタ博士の講演だ。博士はジャガイモのカルシウム栄養研究の権威である。21日午前中の最後に登場した博士の「ジャガイモのカルシウム施肥による品質改善」に関する20年に及ぶ研究成果の解説は、誰にでも理解できるように噛み砕いた分かりやすいものであった。

 博士によると、カルシウムのジャガイモにおける基本的な役割は、細胞の基本構成要素として塊茎の細胞壁や細胞膜の構造を改善すること、および植物体内で外界ストレスに対するメッセンジャーとして作物の外部環境への対応を鋭敏にすることの2点にあるという。このようなカルシウムの役割が、ジャガイモ作物の品質改善に大きな効果をもたらすことになる。例えば、塊茎の中心空洞や褐色心腐などの内部障害や打撲などの外部障害を防止するほか、高温や低温などの環境の気温変動に対して作物の抵抗力を増強し、軟腐病などの貯蔵病害に対して塊茎の抵抗力を高め、さらにカルシウムがもともと不足している地帯においては収量の改善に貢献するなどの効果がある。

 パルタ博士は、Potato News Japanのインタビューに対して次のように述べた。「20年前、米国においても(今の日本と同じように)ジャガイモにはカルシウムは必要ないという通説が横行していました。しかし、現在は違います」

 博士の研究において、現在の成果に至る決定的な分岐点となったのは、ストロンや塊茎に生えている根の役割の発見であったという。それまで、カルシウムはデンプンやリン酸などと同様に他の植物器官、例えば葉や茎から師部を通じて塊茎に転流・輸送されると考えられていた。しかし、博士はそのような経路でカルシウムがジャガイモ塊茎に輸送されないことを証明した。カルシウムは水と一緒に水溶液の形で木部を移動して供給されること、茎葉部と比較して塊茎の蒸発散量が相対的に低いことから主根域で吸収されたカルシウムは塊茎に移動できないこと、塊茎に直接生えている細かな根やストロンに生えている根だけが塊茎にカルシウムを供給できることを証明したのである。



 博士のこの発見はそれまでの施肥の考え方を一変させることになった。カルシウムは、塊茎肥大開始時期にストロンや塊茎の周囲に水溶性の吸収しやすい形態で供給して初めて塊茎の品質改善につながる。そのために、塊茎肥大開始直前の本培土時期に水溶性のカルシウム肥料をバラ播きして畝立てすることで、カルシウム肥料を塊茎が最も吸収しやすい位置に置くことが可能なことを立証した。さらに、近年の研究からカルシウムは生育後期においても必要であることを確認し、灌漑水に混和して供給することの重要性を説明して定着を図ってきたとのことである。

 博士は聴衆の質問に答えて、「土壌分析を何度実施しても、塊茎のカルシウム吸収との関係性を見出すことはできません」と述べ、従来の土壌分析を基本とする施肥体系が博士の新しいカルシウム施肥の考え方に対しては貢献の可能性がないことを説明した。

 Potato News Japanは早くからジワン・パルタ博士の研究の日本における応用の重要性に注目し、博士の研究のフォローを行ってきた。日本のジャガイモ主産地である北海道はもともと火山性の酸性土壌が主体であり、雨が多いことから塩基性養分が失われて土壌の酸性度が高い。その上、近年ジャガイモ栽培で大きな問題となっているそうか病が土壌pHとの相関性が高いことから、生産者はpHをより低い値に維持しようとする傾向が強く、ほとんどカルシウム投与を行おうとしないなど、ジャガイモがカルシウム不足に陥るような背景が日本のジャガイモ栽培には多く存在する。Potato News Japanは、日本のジャガイモ収量が先進ジャガイモ栽培地帯から見て劣ること、空洞や打撲などの品質問題が深刻であることなどの主要な原因はこのカルシウム不足にあると考え、パルタ博士の研究の日本での応用の重要性を説いてきた。今後は、日本の栽培環境におけるカルシウム施肥の実践面での対応に力を注ぐ必要がある。関係各位の理解と努力が待望されるところである。


Potato News Japan編集部