いかにしてオランダはジャガイモシストセンチュウに対処したか(2015/10/8)

 オランダのセンチュウ学者でセンチュウ拡散DSS「ネマディサイド(NemaDecide)」の開発者、トーマス・ベーン博士が9月にイギリスで開催された第4回シストセンチュウ防除シンポジウムに寄せた文章をご紹介します。


『いかにしてオランダはジャガイモシストセンチュウに対処したか』
トーマス・ベーン(ヴァーゲニンゲン大学、植物科学グループ)
コリー・ショーマッカー(ヴァーゲニンゲン大学、応用植物研究所)
レーンデルト・モーレンデイク(ヴァーゲニンゲン大学、応用植物研究所)

 オランダで最初に公式にジャガイモシストセンチュウが確認されたのは1941年のことでした。それから70年が経過した今、ジャガイモは通常3年に1回、または4年に1回の輪作が行われていますが、ジャガイモシストセンチュウは些細な問題でしかありません。欧州のすべての国と同様に、オランダ政府もEU指針に沿って、国全体にジャガイモシストセンチュウが拡大していることが分かった時点で撲滅作戦を開始しました。種子ジャガイモと食用ジャガイモの栽培頻度は、最低でも3年に1回に抑制されました。感受性品種だけが栽培される場合には土壌薫蒸剤が義務化され、感染が確認された場合にも防除のために散布されました。抵抗性馬鈴薯品種の利用も喧伝されました。しかし、 土壌薫蒸剤の利用とセンチュウ調査の増加にもかかわらず、撲滅作戦は失敗してジャガイモシストセンチュウはオランダで支配的な植物病害となりました。発見から40年経過した後もジャガイモシストセンチュウは新たな地域に広がり続けて、すでに確認された感染地ではその規模と数が拡大していました。90年代の後半には、ジャガイモシストセンチュウ防除のための農薬がオランダで使用される農薬全体の60%にまで達するという新たな段階に入りました。ついに土壌薫蒸剤の有効成分が飲料水源にも確認されるようになった時点で、オランダ政府は薫蒸剤を10年間に60%まで低減する研究プログラムを立ち上げました。 結果的に、ジャガイモシストセンチュウの撲滅は不可能なことが分かりました。今日では、ジャガイモシストセンチュウを害のない低いレベルに管理することが目的とされています。さらに、ジャガイモシストセンチュウに関する漠然とした事実を大量に収集する代わりに、このセンチュウの制御に効果的な管理システムを生産者に提供するためには一貫性のある研究手法が採用されるべきであると考えられています。サンプル採集の改良(種子ジャガイモの検査と澱粉ジャガイモでのセンチュウ個体群密度の推定)と部分抵抗性の考え方の導入、そしてその部分抵抗性の強度を確認するための安価で信頼性の高い試験方法の開発が主たる到達目標とされました。収量の減少とセンチュウ個体群の増殖を予測するソフトウェアモデルの利用によって、部分抵抗性品種を利用して防除手段を効果的に適用するための情報を生産者に提供することが可能になりました。 これによる効果は、単に土壌薫蒸剤の激減をもたらしただけでなく、土壌採取機関やコンサルタント、育種家、加工業者やそれに協調する政府に対しての構造基盤をもたらすことになりました。彼らは収集された情報を生産者が利用可能なようにすべきであることを認識して、「ネマディサイド(NemaDecide)」プロジェクトに結集しました。2006年以降、すべてのモデルと過去60年以上にわたって収集された情報がDSS(意思決定支援システムソフトウェア)において利用できるようになりました。訓練されたコンサルトが使用すれば、生産者がジャガイモシストセンチュウを管理して極小化させることが可能です。2010年にはネマディサイドⅡにキタネグサレセンチュウ(Pratylenchus penetrans)とコロンビアネコブセンチュウ(Meloidogyne chitwoodi)が追加されました。今年はジオネマ(GeoNema)ソフトウェアが利用可能になります。これは、生産者が直接利用できるようにした簡単なウェブベースのネマディサイドソフトウェアです。


*この文章については、トーマス・ベーン博士に直接許可を得て翻訳掲載しています。(ポテトニュースジャパン編集部)