米国シンプロット社、イギリスのGMポテト開発に協力(2015/6/17)
英国セインズベリー研究所が中心となっている加工用のGMポテト開発のための5年間プロジェクトに米国のシンプロット社も出資して、開発を推進することになった。
先にポテトニュースジャパンが報告した疫病に対するシールド遺伝子の発見も英国セインズベリー研究所の目覚ましい研究成果の一つであるが、今度は本格的なGMポテトの開発を目指すことになった。シンプロット社は研究に出資して協力するとともに、プロジェクトによって優良品種が開発された暁には、欧州と米国においてその登録と普及を担うことになる。
シンプロット社自身も米国では昨年「イネイト」GMポテトの米国連邦政府の認可を取り付けて今年よりテスト販売に踏み切るスケジュールにあり、今回の研究出資も同社のGM品種戦略を色濃く映し出すものとなっている。
発表によれば、品種開発の目的は①疫病に強く、②ジャガイモシストセンチュウ抵抗性で、③アクリルアミドを生成しにくいように還元糖やアスパラギンの含有量が低く、④打撲によるロスを低減するためにポリフェノールオキシダーゼの活性が低い、夢の品種の開発であるとのことだ。
イギリスでは、毎年約10億円の農薬が疫病の防除に費やされており、シストセンチュウ対策には5億円程度の費用がかかっている。これらの農薬を使わずともジャガイモ栽培ができる品種が開発されれば、ジャガイモの生産コストは大幅に低減されるものと予測される。さらに、アクリルアミドの問題や打撲によるロスの低減も組み合わされれば、まさに人類にとっては環境にも消費者にもやさしいジャガイモの誕生というシナリオになる。世界の今日に至るGMポテト品種の開発経過を観察するに、これは決して夢の話ではない。
確かに今もGMポテトに対する消費者からの風当たりはまだまだ強いが、一方で化学合成農薬に対する消費者のマイナス感情も高まる一方である。GM技術で作られた品種であるという点を除けば、環境に対する影響も農薬残留の問題も一挙にかたがつくとともに、生産コストが大幅に低減されて、消費者にとってはいいことづくめである。さらには、もともとジャガイモにある遺伝子をジャガイモにGM技術で移植するという同種間遺伝子操作による最近の品種開発には、人間で行われている臓器移植にも近いような側面がないわけでもない。人類の人口の増加に拍車がかかっている一方で、気象環境の激変の影響で食糧増産がなかなか進まない現状を考えれば、どこかで人類はGMポテトの積極的利用に舵を取らない訳にはいかなくなるという予測もある。果たして、GM技術の人類への貢献度は一体どの程度と見積れるものなのか。しっかりとした議論がそろそろ必要なのではないかと思われる。
参考:http://www.foodprocessing.com.au/content/food-design-research/news/engineering-the-perfect-spud-732396774