中国の月探査計画、2018年にジャガイモの栽培実験を実施へ(2017/6/20)

 6月6日から8日まで北京で行われた国際宇宙探査会議(GLEX 2017)において、中国の月探査計画の一部として、2018年にジャガイモの栽培実験が行われることが発表された。実現すれば、世界初の月面での栽培実験となる。


 この実験は、中国が国家的プロジェクトとして推進している月探査計画「嫦娥(じょうが)計画」の一部として行われるものである。18×16 cmの円柱型の容器内にジャガイモおよびシロイヌナズナの種子とカイコの卵を入れて小生態系を人工的に作り、これを月探査機「嫦娥4号」で月面に運んで生育が可能かを検証するのが実験の目的だ。この容器は重慶大学の研究チームが中心となって開発したもので、カイコの卵が孵化して成虫になると二酸化炭素が生成され、一方で、ジャガイモとシロイヌナズナからは光合成によって酸素が発生するため、これらが同じ空間にあることによって小さな生態系が構成されるという仕組みになっている。

 この計画にあたっては、温度管理とエネルギー供給が最大の課題となった。植物と昆虫の生存に適した温度は1°C~30°Cであるが、月面の気温は夜間は−170°C、日中は120°Cにまで達する。研究チームは、容器に絶縁層と光パイプを備え付けることによって、生育に必要な環境を整えた。また、特別に設計されたバッテリーを使用することにより、エネルギーの常時供給を可能にした。

 プロジェクトのチーフデザイナーである謝更新氏によれば、このミッションは将来的な月面着陸および基地建設計画のための準備であるという。中国は、2031年から2036年までに有人による月面探査を実現したいとしている。

 月の先に人類が目指しているのは火星である。その場合にまず問題となるのは火星への距離で、有人探査のミッションで地球から火星まで往復するには最短でも1年半かかるとされている。この期間に必要なすべてのエネルギーと食糧を地球から持参することは困難である。このため、宇宙でのエネルギー製造技術と農業の研究が不可欠となる。

 宇宙開発で米国やロシアに続く世界の3強を目指す中国も、2020年に火星探査機を打ち上げる計画をすでに発表している。その先には、当然火星の有人探査と基地建設を見据えており、月探査の経験から蓄積された技術がそこで生かされることになるだろう。

 2015年に公開されたSF映画『オデッセイ』では、火星に取り残された植物学者の宇宙飛行士が食糧を確保するためにジャガイモを栽培するが、宇宙空間での農業はもはや夢の話ではない。実現するのはまだしばらく先のことだが、人類はこの目標に向かって確実に前進している。嫦娥4号のミッションが成功すれば、『オデッセイ』の世界がさらに近づくことになる。


参考ニュースソース:South China Morning Post
http://www.scmp.com/news/china/society/article/2098262/china-plans-grow-potatoes-moon-matt-damon-did-martian


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