ブレグジットは好機? 英国ジャガイモ生産者の思惑(2017/10/17)

 11月22日(水)と23日(木)の2日間、英国最大のジャガイモ業界関連展示会「BP(British Potato)2017」がヨークシャーで開催される。同展は隔年開催されており、生産者、研究者、サプライチェーン関係者が一同に会し、最新技術の紹介や注目のトピックスに関する情報交換が行われる。2016年6月に実施された欧州連合離脱(Brexit;ブレグジット)の是非を問う国民投票以降の開催は今回が初めてであり、セミナーでは「The Big Brexit Opportunity(ブレグジットがもたらす大きなチャンス)」をテーマとしたディスカッションプログラムが予定されている。


 パネリストを務める全国農業者組合(NFU)ポテトフォーラム議長のアレックス・ゴッドフリー氏は、「ブレグジットによりEU域内から輸入されていたジャガイモに代わって国産ジャガイモの需要が高まる可能性があり、前向きな生産者はこれをチャンスとしてとらえています」と話す。「ただし、人手不足の問題があり、また、EUの作物保護規則から国内の法規制に移行する際の対応によっては、生産者の活動や取引が制限される可能性もあります。しかし、ブレグジットをきっかけとして科学とリスクに基づいた新たな体制を構築することができれば、全生産者が恩恵を受けることになるでしょう」

 同展のセミナーでは、英国ジャガイモ産業の競争力維持を目的とした様々なテーマのプログラムが予定されている。世界の主要なジャガイモ生産国の技術に関するセミナーのスピーカーを務めるR S Cockerill社のルーファス・ピルグリム氏によれば、英国はジャガイモ栽培に適した気候に恵まれ、マーケット、資源、知識を有し、環境的、政治的、社会的な問題も少ないという点において、他の生産国よりも有利な条件にあるという。「とはいえ、わが国のジャガイモ産業を維持するためには、英国単独主義に依拠することはできません」と同氏は話す。

 英国のメイ首相は、ブレグジットの貿易交渉において、単一市場からの離脱方針を表明している。しかし、英国にとってEUが引き続き重要な貿易相手となることは間違いなく、貿易に対する影響を最小限にとどめたいというのが英国とEUの共通の見解である。英政府は、今年8月に発表された交渉指針の中で、2019年3月末の離脱後に移行期間を設け、EU域内で関税なしに貿易ができる関税同盟に一時的に留まり、その後EUとの間で新たな貿易関係を構築したいとの意向を示している。EUとの有利な貿易条件を維持しつつ、移行期間にEU以外の国との自由貿易協定(FTA)交渉を進めたい考えだ。いいとこ取りの提案にEU側の反発は避けられないが、交渉の決裂は双方の不利益となるため、貿易交渉においてはこれらの条件をめぐって妥協案が探られるという流れになるだろう。

 英国はドイツと並ぶEU最大のジャガイモ市場である。特にフライドポテトなどの冷凍加工ジャガイモに関しては輸入依存度が高く、50%以上をオランダやベルギーなどからの輸入に頼っている。関税同盟が廃止されて安価な輸入ジャガイモの価格が上昇すれば、国産商品の競争力が高まるという利点もあるが、これは一時的な現象で、生産の効率化には直接つながらないことに留意する必要がある。また、価格上昇は政治問題となるため、関税引き下げ・撤廃や低関税率割当などの措置により、EUによる英国市場へのアクセスを維持するための対応がとられる可能性がある。

 一方、輸出に関しては、種イモが英国の主要な輸出品目である。種イモは、EU域外が主な輸出先となっている唯一の分野で、2015/2016年度は、エジプトをはじめとしたEU域外への輸出が73%を占めていた。EUからエジプトやモロッコなどへの種イモ輸出に関しては関税が撤廃されているため、これらの国々との関税をブレグジット後もゼロに維持することができなければ、オランダなどのEU内の競合国に比べて不利な立場となる。

 ただし、EUの単一市場からの離脱には明るい側面もある。EUとEU域外の国との貿易交渉では、EU加盟28カ国の承認が必要となるため、交渉が複雑化する場合が多い。ブレグジット後は、これらの国々と二国間の協定を結ぶことが可能となる。種イモに加えて、ポテトチップなどの加工ジャガイモも近年輸出が増加している分野であり、特にアジアは有望な市場である。EUの規制に縛られることなく自由にFTA交渉を行うことができるようになれば、ジャガイモ生産者にとっては大きなプラスの要素となる。

 BP2017のセミナーを企画する英国農業園芸開発委員会ジャガイモ部門(AHDB Potatoes)のロブ・クレイトン氏は、ブレグジットに備えて業界全体が協力することが重要であり、現在の課題を見極めた上で、ブレグジットをチャンスとして生かすべきであると考えている。BP2017はジャガイモの生産から流通までの全段階を対象とした英国唯一の展示会であり、各分野の関係者がこの話題について話し合うための絶好の場となるはずである。AHDBでは引き続きブレグジット問題に関する議論の場を提供していく予定で、今後は生産性向上のために研究者と生産者の協力を図るほか、市場の変動などの要因についても検討していくとのことだ。


参考ニュースソース:AHDB
https://potatoes.ahdb.org.uk/news/bp2017-seminars-set-path-potatoes-post-brexit
https://ahdb.org.uk/brexit/documents/Potatoes_bitesize.pdf