農林水産省、「スマートフレッシュ」のジャガイモへの適用拡大を承認 (Potato News 2019/9/3)

 農林水産省は9月3日、リンゴやナシ、カキ等の果物において貯蔵時の鮮度保持を目的に急速に普及が進んでいる「スマートフレッシュくんじょう剤」のジャガイモへの適用拡大を承認した。


 スマートフレッシュのジャガイモへの適用は、日本で唯一の発芽防止剤として使用が認められている「エチレン」と併用して、発芽を抑制しながらジャガイモの糖化を防止して、例えばポテトチップ製造向け加工用ジャガイモのフライカラーの向上が期待されている。
 2007年から日本で試験導入が始まり、その後特定農薬として登録されたエチレン発芽防止剤において、利用上の大きな悩みは適用可能なジャガイモ品種が限られていることであった。
その問題をスマートフレッシュは解決して、従来エチレン発芽防止剤を適用すると糖化が進みすぎて、ポテトチップやフレンチフライなどの油調製品に不向きであったジャガイモ品種を、前述の油調製品加工にも利用可能性にすることである。
 スマートフレッシュは貯蔵したジャガイモに倉庫でエチレンガスを適用する前に使用することで、ジャガイモのエチレンガス受容体先に取り付いて、後から適用されるエチレンが取り付けないようにする。エチレンガスがエチレン受容体に取り付いてしまうことで起きる作用の一つが、ジャガイモの急速な糖化である。今までは、エチレンの作用で増加した糖分は、スノーデンやキタヒメといった品種ではその後の貯蔵時の代謝において消化されていくので、しだいに糖分が少なくなっていき、最終的にはポテトチップ製造に向けられる程度に軽減する。ところがこの低減作用は、スノーデンやキタヒメ以外の品種では充分でなく、結果的に糖分の低下も不十分で、例えば男爵などのジャガイモを使用したポテトチップを製造することは、秋の収穫直後の1時期を除いて困難であった。それが、スマートフレッシュを使用することで解決される可能性が出できた。
 さらにはスノーデンやキタヒメといったエチレン貯蔵に適しているとされている品種であっても、エチレン適用直後は糖分が必要以上に高くてそのままではポテトチップ加工には向いていなのでしばらく時間を置く必要があるが、スマートフレッシュを使用すると最初から糖分が増えない状態のままなので、糖分が低下するまで時期を待つ必要がない。
 そうして今後の期待されるのは、今までエチレン貯蔵で好成績を上げてきた品種においての、ポテトチップ用原料としての加工適正期間を延長する可能性である。まだまだ未知のことが多く、スマートフレッシュがジャガイモ加工に新しい息吹を吹き込むことが大いに期待される。
 ところで、欧州においては長年ジャガイモ産業界を支えてきた発芽防止剤CIPC(クロロプロファム)の利用が禁止された。これは以前より可能性が指摘され続けてきたのだが、昨年それが本当のことになった。そこで、それにとって代わる発芽防止剤の模索が継続しているが、その一つの可能性がエチレンガスの利用である。エチレンガスの利用においての最大の弱点はフライカラーの低下であり、フライカラーに厳しい欧州の品質評価ではエチレンガスで発芽防止したジャガイモは油調製品には不向きであるとされてきた。その解決策として、エチレン発芽防止剤開発の初期に検討されたのがスマートフレッシュとの組み合わせであり、カナダ北大西洋食品加工研究所のロバート・プランジ博士とバーバラ・ダニエルズレイク女史の研究による論文が早くから上梓されていた。残念なことに、カナダではエチレンガスが発芽防止剤として商業的に利用されることはなく、それに注目していた日本においていち早く花開くことになった。
 エチレンは、貯蔵中にジャガイモの目の部分において分化分裂して生長してきた新しい芽の細胞に取り付いて、その芽の伸長を抑制する。芽の細胞は新しい細胞であり、スマートフレッシュがまだ取り付いていないために、スマートフレッシュを適用した後のエチレンによって発芽伸長抑制されるという具合である。
 エチレンは、ジャガイモ発芽防止剤としては最も安価、かつ安全性の高いものであり、農薬に特有の最低許容残留量が規定されていない。それは、ジャガイモ自体もエチレンを発生しており、例えジャガイモのエチレン含有量を測定できたとしてもそれがジャガイモ自身が生成したエチレンなのか、外から適用されたエチレンなのか区別が不可能なことによる。
 エチレンは、20世紀初頭においては麻酔薬として利用されていた歴史があり、その時の使用濃度は70%という超高濃度であった。それでも、回復後の患者の状態は現在の麻酔薬以上に健全なものであったという。エチレンは植物や動物が自ら生成する重要な物質であり、植物ホルモンとして様々な作用を持っている。その代表的なものは輸入されたバナナの追熟であり、消費者の皆さんは明治の時代からエチレンのお世話になっている。
 なお、スマートフレッシュくんじょう剤の農薬登録の詳細は以下の如くである。
 製品名: スマートフレッシュくん蒸剤
 農薬の種類: 1-メチルシクロプロペン
 適用場所: 倉庫等施設内
 希釈倍数使用量: 68mg/m3
 適用時期:収穫後~エチレン処理前まで
 使用目的:貯蔵中の糖化抑制
 燻蒸時間: 24時間
 使用回数:1回
 スマートフレッシュについてのお問い合わせは、アグロフレッシュジャパンまで。


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