日本では普及していない農業資材でジャガイモの収量向上?

農業ニュース

シンジェンタの「Quantis」、バイオスティミュラント(生物刺激剤、略称は「BS」)を使用することで、種芋からより多くの塊茎の数や重量が増加し、ジャガイモの全体の収量を向上させることがシンジェンタのジャガイモ実験で分かった。

シンジェンタのジャガイモ実験は、オランダのワーゲニンゲン大学が研究機関との連携をヨーロッパで人気のあるジャガイモの品種である「イノベーター(Innovator)」で行われた。
作物のストレスのある乾燥した環境で「Quantis」を投入した種芋と「Quantis」無投入の種芋を比べたら、11%以上の塊茎が増加し、サイズが平均的に大きくなり、重量も8%増加した。また、「Quantis」を一番効果的な投入タイミングは、塊茎が小さな豆のようなサイズになった時点であることが明らかにした。

ワーゲニンゲン大学の研究者は、「Quantis」を投入した種芋のストロンの数を観察や記録し、乾燥によるストレスのある環境と通常環境の成長条件で同じく「Quantis」を投入した種芋のストロンの数を比べたら、30%増加したことを示した。

シンジェンタのフィールマネージャーのアンディ氏は、塊茎の形成と塊茎の成長の開始は、高温などのストレスに非常に敏感な期間だ。「Quantis」が高温によるストレスの期間中に成長中の作物に与える影響を軽減し、収量を大幅に増加させる研究、反復試験することを分かったという。また、2リットル/ヘクタールの割合で「Quantis」を早期に投入により、より多くの大きな塊茎を生産するように促すことで、効率的に成長させる可能性があることを明らかにしたという。

「QUANTIS」とは?

「QUANTIS」は、シンジェンタが開発されたバイオスティミュラント(生物刺激剤)であり、有機炭素、カリウム、カルシウム、エネルギー源の炭水化物(糖類およびアミノ酸)の組み合わせを含んでいる。これらの成分は、作物における干害や高温に弱い性質(ストレス)の軽減に寄与する。異なる化合物の最適な比率で組み合わされた「QUANTIS」は、作物の成長の重要な段階で、ストレスに対する作物のサポートを行い、最終的に収量と品質を確保する。

「QUANTIS」の仕組み?

「QUANTIS」に含まれる自然由来の化合物は、抗酸化物質と浸透保護物質として直接的な作用を行い、ストレスが作物の細胞に与える逆効果を相殺する。「QUANTIS」は、作物自身の細胞プロセスを積極的に刺激し、構造内の流体の適切な圧力を維持し、酸化ストレスに対抗する。これにより、作物は活発で効率的な光合成を維持し、成長と発達に特化したタンパク質の生産を続けることができる。これが収量と品質の主要な要素だ。

そもそも、バイオスティミュラント(生物刺激剤)は肥料、農薬、土壌改良剤?

ヨーロッパを中心に世界中で注目を浴びている新しい農業資材だ。BSは、作物や土壌により良い生理状態をもたらす様々な物質や微生物である。農薬が解決すべきターゲットは害虫、病気、雑草、生長調節(生物的ストレス)であるのに対し、BSは干害、高温障害、塩害、冷害、霜害、酸化的ストレス(活性酸素によるダメージ)、物理的障害(雹や風の害)、農薬による薬害など、非生物的ストレスに対する抵抗性を高め、結果的に収量や品質改善を実現しようとするものである。
バイオスティミュラントの世界市場は増加傾向にあり、2022年には33億ドル(約3663億円)になる見通し。
より具体的には、
・活性酸素の抑制
・光合成の活性化
・開花・着果の促進
・蒸散のコントロール
・浸透圧の調節
・根圏環境の改善
・根量の増加・根の活性向上
などの効果があげられる。

国内におけるBSの法的位置づけ

病害虫雑草の防除を管轄する農薬や、作物に栄養を供給し土壌に化学的変化をもたらす肥料、さらには土壌に物理的改変を与える土壌改良材のいずれの法的範疇にも収まらない。そのため、現状では既存のいずれの法律にも該当しない製品カテゴリーである。
ただし、いわゆる機能性肥料と呼ばれる、肥料成分とBSの混合製品は、肥料取締法に基づき適正に販売を行なっている。
日本のBS市場規模は現在、約100億から200億円。農薬市場と比較すると40分の1~20分の1程と小さいが、今後は広がる見込み。

出典
Syngenta UK
日本バイオスティミュラント協議会

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